猫の皮下輸液(皮下点滴)には、大きくわけると重力落下式とシリンジ式の2種類があります。
ただそれぞれ微妙にちがうパーツや組みあわせがあるので、バリエーションは無数。
ひとつひとつはちょっとの差とはいえ…。
これまでずっとなれ親しんだやり方を変更するのは、なかなか容易ではありません。
今回は、私が初めて経験したシリンジ方式についてくわしく記録しておきます。
(忘れないための自分メモ。)
シリンジ点滴に必要なもの
このページ冒頭の写真が、シリンジ点滴に必要なもののほぼ一式になります。
(写真に入れ忘れましたがアルコール綿も必要です。)
写真の上段左から順に説明していきます。
注射針(18G×1)
輸液バッグからシリンジへ液を抜き取るため(だけ)の注射針です。
針の「G(ゲージ)」は太さをあらわしています。
ほかの太さでも使えると思いますが、数字が大きいほど針穴が小さいので、抜き取るのにより大きな力と時間が必要になります。
「×1」というのは長さで、1は1インチを意味するとのことでした。
ほかに「5/8」や「1/2」というサイズもありますが、輸液を抜き取る用途だとこれ(「×1」)くらい長いほうが扱いやすいです。
今回のシリンジ方式の場合、この針は実際に皮膚に刺す目的では使いません。
ソルラクト輸液
輸液にもいくつか種類がありますが、腎臓病でよく使われるのがこのソルラクト。
電解質のバランスに問題があるときなどは、生理食塩水のようなほかのタイプが出されることもあります。
ソルラクトには、500ml、250mlなどサイズがいくつかあります。
100ml(150mlだったかな?)入りもあるようですが、私はまだ見たことがありません。
(病院で以前、使いたければ100mlの取り寄せもできるといわれました。)
値段は250mlとそこまで変わらず、どうしても割高になるので、うちでは出番はなさそうです。
50mlシリンジ
私が今まで猫関係で使ったシリンジでは、これがいちばん大きいです。
このシリンジの先端に翼状針をつなげ、皮下に点滴します。
衛生上使いまわしはできないので1本ごとの使い切り。
クロは1回につき100ml入れるため、毎回50mlシリンジが2本必要です。
今の病院では、50mlシリンジは1本100円(税抜)します。
毎回だとコスト的にちょっときついかなと思い、一応先生に聞いてみました。

倍の100mlシリンジ1本でやってはダメなんですか?

100mlも出せますが、点滴用として使うとめちゃくちゃ力がいるから大変ですよ?(=なのでやめたほうがいいです)
うちで50mlシリンジを経験してみると、たしかにこの時点でけっこうな力が必要でした。
(非力女子や子どもだと涙目レベルのかたさかも。)
すみません、もう100ml使いたいなんて言いません。
シリンジキャップ
シリンジに液をみたしたあと、点滴に使うまで先端にはめておくキャップです。
液もれや先端の汚染防止用です。
これをつけてシリンジごと、レンジなどで加温できます。
翼状針
初めて使うときは見なれないのでちょっとドキドキしました。
左の先端のキャップをはずしてシリンジにはめ、右の先端の針は猫の皮膚へ。
緑の羽があることで針が抜けにくくなるそうです。
針の太さは21G。
私がこれまで使っていたもの(18G)よりすこし細めです。
重力落下方式でこれをそのまま使うと、流れる量が少ないためかなり時間がかかりました。

細めの針の場合、点滴で使うにはなんらかの形で加圧しないと大変だと思います。
※シリンジ方式では手元でじかに圧がかけられますが、落下式では要加圧バッグかも。
シリンジに輸液を充填
消毒用アルコール綿、翼状針、シリンジ2本を手元に用意します。
シリンジはパッケージから出し、それぞれに針とキャップをつけておきます。
翼状針は液の充填が終わるまで出番がないので、まだ未開封。
輸液バッグを吊るす
S字フックなどを使い、適当なところにぶらさげます。
シリンジ方式ではここから直接点滴するわけではないため、作業しやすい場所ならどこでもかまいません。
シリンジに液を移すだけなので、ぶらさげずに置いた状態でもできるとは思いますが…。
空気が入りやすくなるのでやっぱりぶらさげるほうがおすすめかも。
キャップのゴムを消毒
未使用の輸液バッグであればキャップ部分にシール(フィルム)がついているので、はがします。
症状によっては事前に病院で薬などを入れることもあり、その場合はシールはとれています。
針を刺す前にゴム部分をアルコール綿でふいて消毒します。
この工程は、未使用状態の初回であれば省略してもかまわないようです。
ただし同じ輸液バッグからの2回目以降の作業では、私は必ず消毒をおこなっています。
シリンジで液をはかる
針をつけたシリンジで必要な量の液を抜きますが、この作業も案外力がいります。
いきおいあまって針が抜けないよう注意です。
空気が気になれば押し出す
シリンジに多少空気が入っても、点滴するとき体に入れないよう気を付ければ大丈夫。
それでも空気がたくさん入ってしまったときや、中の気泡が気になるときは、事前に針を上に向けて空気を押し出しておきます。
液をすこし加温する
液はすこし温めて使うと猫の抵抗がすくなくなります。
病院で指示されたのは「液の入ったシリンジを電子レンジですこし温める」方法。
秒数はレンジのワット数にもよるので、人肌くらいをめやすに調節します。
熱すぎる輸液は皮下をやけどさせかねないため、くれぐれも温めすぎにはご注意を。
点滴を入れるまえに一度温度確認する習慣をつけておくと安心です。
うちの温めかた
個人的に、なんとなくシリンジを直接レンジで温めるのがいやだったので…
いつも使っているレンジ式湯たんぽで温めてみました。
湯たんぽ方式はゆっくり温めるせいか温度ムラができにくく、わりと気に入っている方法です。
ゆたんぽをふつうにレンジで温め、カバーのすきまにシリンジをいれて5分くらいほったらかし。
点滴するまで時間があるときは、この方法で輸液バッグをまるごと温めておくこともあります。
こちらも点滴する前に一度ちょっと押し出して、必ず腕などで温度確認をします。
針を刺す準備
あらかじめシリンジに翼状針をつないでおきます。
針のキャップ(カバー)はまだつけたままです。
位置決め
だいたい肩甲骨のあたりといわれたりしますが、クロはわりとひんぱん(2日に1回)に点滴するので、場所はあちこちずらしてやっています。
とんでもなくお腹よりとかお尻よりとかでなければ、本猫はあまり気にしません。
皮膚を消毒
刺す部分を軽くアルコール綿でふいておきます。
病院からアルコール綿を渡される場合もありますが、うちでは市販のものを使用。


点滴する
翼状針のキャップをはずします。
とがったほうが下(体側)になるように、皮膚に刺します。
皮膚をつまんでテントの形を作り、そのすきまに刺す感じ(と教わりました)。
無事刺さったら、そのまま手を放してシリンジで注入。
緑の羽が針の脱落防止になるらしく、手を放してもちょっとくらいでは抜けないようです。
輸液が適温であれば、けっこう力をこめていっきに入れても大丈夫。
温度が低いときは背中がビクビクしたり、「冷たい」と訴えられるので、速度を落とします。
シリンジを交換
クロの場合は100ml入れるので、50mlシリンジだと2本必要です。
1本終わったら、針は刺したままでシリンジだけ交換します。
交換した2本目もすべて注入します。
止血して終了
針を抜くと血が出ることがあるので、その部分をアルコール綿でしばらく圧迫します。
うちの場合は30秒~1分くらい圧迫しています。
それでもまだいくらか水がもれたり、血が出たりすることが多いですね。
だいたいいつも適当なところであきらめちゃいますが(笑)
まとめ
うちのもともとのかかつけは落下式の点滴で、ラインも針もシンプルタイプ。
コストもわりと抑えられていました。
新しい病院はシリンジ式だったため、これまでの落下式継続を希望した私に提案されたのが、こちらのやり方。

今思えば、そのせいでかえって面倒な方法になってしまったようです。
(はじめからおとなしくシリンジにしておけばよかった。)
いくらかコストは増しますが、シリンジもかなりやりやすい方法だと感じました。
とくに1回60mlくらいまでの少量ですむうちは、シリンジのほうが小回りがきくのでいいです。
まあだからといって方式変更の希望が通るわけではないんですけどね~。
基本的に、ひとつの病院ではひとつの点滴方式が採用されていることが多いので。
症状にあわせて点滴方式が変えられたら良いのになーと思ったりもしました。
さいごに
皮下点滴のやり方がプロの手できちんとまとめられているサイトも、改めてご紹介しておきます。
どちらも獣医師による説明のため、(うちのような)素人があれこれ書いているブログよりはよっぽど信頼できると思います ^ ^;
点滴猫さんがいるお家なら、一度は目を通しておくのがオススメ。
点滴方法の違いや器具の使い方などが一通りわかりやすく説明されているのがこちら。

器具の違いや目的、トラブルの対処法などかゆいところに手が届く解説がこちら。



おまけ:輸液バッグについて
袋の目安と実際の量にズレがある
Twitterでも書いたのですが、今回計ってみるまで、こんなに表示とのズレがあると思ってませんでした。
今回のシリンジ点滴で正確に100ml抜いてみて、輸液バッグの目盛りが全然あてにならないことも知りました😖#猫の皮下点滴 #猫の皮下輸液 #猫の腎臓病 #猫の甲状腺機能亢進症 #高齢猫 #猫の腎不全とおつきあい pic.twitter.com/Aq2bcJ69HM
— kuro@腎不全猫 (@kuro_kidney) August 30, 2020
ズレた状態を写真にとっておけば、今後の吊り下げ点滴で参考にできるかな、とも思ったのですが……。
輸液バッグを手でもったり、壁にふれてぶら下がっているだけでも、微妙に見かけの量ってかわってしまうんですね。
あんまり参考にはできないみたいです。
ただ、完全宙ぶらりん状態で使う&はかる前提であれば、多少の目安にはなるかもしれません。
(上の写真は完全宙ぶらりん状態で計量したものの、よく考えたら1回空気を入れちゃったので袋がパツパツになっていて不正確です。)
↓さらにこちらの500mlバッグは、大きいぶん壁にもふれやすく、あんまり信頼できる目印がつけられませんでした。
輸液バッグに入っている正確な量は?
以前病院で、袋の液の量は少し多めに入っていると教えてもらいました。
でも実際シリンジではかってみたら、目盛りとのズレがものすごい。
「これってもしや、表示より少ないこともあるのでは……?」という一抹の不安が。
念のために一度ぜんぶ抜いて量を調べることにしました。
こちらは250mlバッグから200ml(点滴2回分)を抜いたあと、残っていた量。
初回点滴時だけほんのすこし多めに取ってしまったので、おそらくもともとの袋には5mlくらい余分に入っていたと思われます。
そして500mlバッグ。
こちらは毎回きっちりはかっていました。
450ml(50mlシリンジ9本)抜いたあとに残っていたのが、この量。
250mlは5ml多めだったので、倍の500mlで10ml多め、というのも納得です。
このへんの計量については、かなり正確にされているんだなーと思いました(笑)
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