看取り本は読むとだいたい泣いてしまうので、私もけして進んで読みたいわけではありません。
でもいざというときに何も知らないと、あとでたぶん後悔します。
その後悔を少しでもへらすため、とりあえずぐっとこらえて、猫さんが少しでも元気なうちに一冊読んでみませんか。
まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り
今回は、以前から読みたいと思っていたこちらの本を取り寄せてみました。
2019年5月発行
著者・STAFF
【編者】猫びより編集部
【構成・文・まんが原作】栗田佳織
【監修】古山範子(獣医師)
【医療指導】西村知美(アール動物病院院長)
【ケア指導】武原淑子(東京都動物愛護推進員)
【イラスト】小野崎理香、ななおん(まんが)
【カバーデザイン】岡睦(mocha design)
【本文デザイン】荒井桂子
もくじ紹介
プロローグ ぼくともすけ
【Vol.1 余命宣告】
ドクターズコラム1:治る病気・治らない病気
ドクターズコラム2:末期の際にできる治療
猫せんぱいの知恵袋 その1:いざというときこそ飼い主の出番!【Vol.2 心地よい環境】
猫せんぱいの知恵袋 その2:安心していられる環境づくりを【Vol.3 投薬】
猫せんぱいの知恵袋 その3:あの手この手でお薬を体内へ
ドクターズコラム3:猫のお薬 キホンの知識【Vol.4 ごはん】
ドクターズコラム4:「おいしい」は生きる力
Dr.古山 Presents:手作りごはんアラカルト【Vol.5 副作用】
ドクターズコラム5:点滴の効能
猫せんぱいの知恵袋 その4:点滴は猫の看病の通過儀礼?【Vol.6 治療の選択】
ドクターズコラム6:治療方針を見極めるタイミング
Dr.古山 Presents:自宅でできる! 猫さんほっこり しあわせケア【Vol.7 緩和ケア】
猫せんぱいの知恵袋 その5:食べて出して寝る! …ためのサポートを【Vol.8 発作】
ドクターズコラム7:末期の対応を決めておく【Vol.9 鈴木スペシャル】
猫せんぱいの知恵袋 その6:猫に安心をもたらす飼い主の心の元気【Vol.10 もすけ】
ドクターズコラム8:「そのとき」の迎え方
猫せんぱいの知恵袋 その7:そばで看取るだけが正解じゃない【Vol.11 おみおくり】
猫せんぱいの知恵袋 その8:儀式によって救われる心もある【エピローグ 日にちぐすり】
おまけ もすけと鈴木の80ぶんの79の日々
ふたたび 前を向いたときのこと
いつかまた会える日まで
発刊によせて
感想
本の構成はマンガがメインなので、本が苦手な人やこまかい字が苦手な人でもさくっと読めます。
マンガとマンガのあいまにはコラムやヒント。
まず主人公が直面した問題がマンガで描かれ、それについて、獣医師とベテラン飼い主さん、それぞれがアドバイスしてくれる感じです。
ここが良かった!
複数の視点
登場するのは介護初心者(マンガでは「鈴木」くん)と、獣医師と、ベテラン飼い主さん。
それぞれの視点が同じくらいの比重で扱われている印象でした。
疑似体験しているようですんなり理解しやすいです。
たとえば皮下点滴であれば、初めての点滴に動揺する「鈴木」くんが登場。
そこに獣医師による皮下点滴の意味についての解説。
さらにベテラン飼い主さんによる自宅点滴のアドバイス。
介護初心者がおいてけぼりにならないよう、順をおってていねいに進んでいきます。
リアリティのあるヒント
介護体験に即した、なるほど!と感じる実用的なヒントや小技がちりばめられていました。
「こんなときどうしたらいいの?」「もっと良い方法ないのかな?」
個人的にそんなふうに思っていたことが、いくつかこの本で解消されました。
具体的には、カプセルへの粉薬の詰め方や、酸素ルームのカスタマイズなどです。
この手の日常的なヒントって、病院ではあまり教えてもらえなかったりするんですよね。
ここはもう少し知りたい
情報量がやや少なめ
マンガが主体の本なので、どうしても情報量は少なめ。
看取りにつながる病気の説明や、葬儀など、あっさり流される部分もけっこう多かったです。
なので「これ一冊読めば看取りの知識が全て身につく」というわけではありません。
もっと詳しい情報が知りたい場合は、ほかの本などもあわせて読む必要があります。
ちなみに私がこれまで読んだ看取り本(3冊)だと、情報量が多かったのは下記の順でした。
逆にいうと、冷静に看取り本を読む自信がない場合などは下から順に読んでいくと、比較的耐性がつきやすいかもしれません。
こんなときにおすすめ
できれば、猫と暮らす人すべてに一度は読んでもらいたい。
(帯の町田康氏と同意見。)
なかでもとくに高齢の猫さんと暮らしている人は、まだ元気なうちにぜひお手元に。
ただ、今現在まさに猫さんの体調が悪くなってきている、という方はちょっとご注意を。
人によっては精神的にキツくなってしまうかもしれないので…。
それでも個人的には読んでおくほうが良いとは思います。
心の準備をしてからどうぞ。
おもな入手先
そのほかの看取り本についても、こちらでいくつかご紹介しています。(2019年版追記あり)
さいごに
今回読んだ本は、ほかの看取り本にくらべると、たくさんの人(の愛)によって作られていると感じました。
そしてその関わっている人がみんな対等です。
ライターさんやデザイナーさんも、イラストレーターさんも、みんな猫や犬が大好きな人ばかり。
(最後のほうで、それぞれが看取った猫や犬への思いを表明するページが写真付きで設けられているのも異例です(笑))
監修の先生や、ベテラン飼い主として登場されている猫ボラさんも、けして上から目線ではありません。
関わっている全ての人が、猫好きな人間のひとりとして常に隣によりそってくれていました。
これはたぶん、猫雑誌の「猫びより」さんが編集しているというのもあるんでしょう。
「猫びより」は私もかなり好きな雑誌なので、こんな本を作ってくれるのはなんだかうれしいなーと思いました。
11月16日追記 この本の紹介記事を読んだところ、こちらはライターの栗田佳織さんの持ち込み企画ということでした。となると、猫びよりというより栗田さんの猫愛によってできているということですね! ^ ^
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